時事通信社「地方行政」1999/6/3掲載記事

市町村営経営フォーラムを開催−兵庫県尼崎市

行政管理から行政経営へ発想の転換を

  民間企業の経営手法を自治体経営に生かそうと、行政評価などについて自主研究活動を展開している行政経営フォーラム(主宰・マッキンゼー日支社、上山信一氏)は、兵庫県尼崎市で「市町村営経営フォーラム'99」を開催した。全国の自治体職員や、首長、研究者ら約二百人が参加、海外で進められている行政改革の事例などを通じて、我が国の行政の在り方について議論した。

顧客満足度を重視

 フォーラムの冒頭、慶応大学大学院の玉村雅敏氏らが米国における行政経営事情を報告、行政の在り方について、「行政管理(public administration)の考え方から行政経営(public management)への発想の転換が重要である」と指摘した。

 行政経営の特徴は、行政管理が法令や、規則を規定してサービスを定義し、顧客満足度を重視すること。顧客=納税者が「税金の払い甲斐(がい)」を感じる「バリュー・フォー・マネー」の発想を基に、経営状況のチェック手法として米国の自治体で取り入れられている「ベンチマーキング」を紹介した。

 ベンチマーキングとは、廃棄物処理や福祉サービスなどについて、近隣自治体などにおける最も優れた事例を目標として設置、@インプットAアウトプットB効率性Cアウトカム(目標達成度)−をそれぞれ数値化して比較する仕掛け。アウトカムをどうとらえるかによって、インプットなどの各目標が異なるため、顧客の要求を満たす目標設置が必要だ。

 玉村氏は「数値化のメリットは、他の自治体の優れた事例などと比較し、経営をチェックできる点。」と話し、「目標とした数値にどれだけ近づいたかで、努力の結果が見える」と説明する。一方で、この手法を取り入れている米国の自治体では、首長が選挙を意識するあまり、短期的な結果ばかりを追求し、長期的な政策や視点が欠ける弊害があることも指摘した。

大切な外部との交流

行政改革などをテーマに三重県や高知県など全国自治体を取材しているジャーナリストの細川珠生氏による報告などに続いて、逢坂誠二北海道ニセコ町長が講演し、同町の取り組みを紹介した。

 同町役場出身の逢坂町長は「住民が行政に参画するには、行政の持つ情報を広く提供し、住民と行政が情報を共有することが必要」として、行政情報の提供に力を入れている。毎年四月、各自治会の代表を対象に、町予算の説明会を開催するとともに、イラストなどを使った予算の解説書「もっと知りたい今年の仕事」を全世帯に配布。住民と行政が共に町づくりを考えるため、担当課長が直接出向き、住民の疑問などに答える「町づくり町民講座」も実施している。

 同町長は、「町政に関する議論を通じて、アンチ町政だった人も町の応援団になってくれた」と振り返る。「自分の役所だけでなく、外部との交流が大切。目線を自分の役所だけに置いていては駄目」と全国の自治体職員にエールを送った。

 続くディスカッションでは、佐賀県多久市の横尾俊彦市町が「改革にとって必要なことは、職員の意識改革」と指摘。逢坂ニセコ町長も毎朝、全職員に電子メールを送るなどして、情報の共有化と相互理解に向けて取り組んでいることを紹介した。

 最後に参加者全員で、「あまがさき宣言'99」を採択。予算削減などばかりが行革ではなく、住民の顧客満足度を高めることを目指すことを盛り込んだ。       

(松本賢志=神戸総局)