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14:地方債の手引き


馬場です。今取っている講義のひとつが「Financial Management in Public Sector(公的部門の財政管理)」です。ミッドターム・ペーパーのために地方債のことを調べましたので、ご報告します。玉田さんへのお答えになってるかな?

オレゴン州出納室(Treasury)が発行している「オレゴン地方債の手引き(Oregon Bond Manual)をインターネットで入手し、勉強しました。(百ページ以上ある本がネット上に「置いてある」というのがすごいです。http://www.ost.state.or.us/wrapdebt.htm 本として買うと35ドル。)

州内の市町村、郡(County)、学校区(School District)などが発行する市町村債(Municipal Bond)の発行の手引きです。出納室にある市町村負債助言委員会(Municipal DebtAdvisory Commission)の発行です。

 そもそも米国の場合、日本と違って起債を発行することがルーチンワークではないようです。公共事業の規模が日米で大きく違い、年中行事として起債を発行するという感じではありません。 ちなみに「公的資本形成」の対GDP比率で国際比較しますと、(1995年OECD資料)日本 8.0% (国 1.3%,地方 6.7%)米国 0.3% (国 0.2%,地方 0.1%)と巨大な差があります。米国のGDPは日本の二倍以上ですが、それにしたって日本全体で米国の10倍もの公共投資、地方政府では二、三十倍もの投資をしていることになります。他の西欧諸国はだいたい2%くらいですので日本の公共投資はやはり突出しています。

土地代がバカ高いせいなのかどうか。「社会資本の整備が遅れている」のも事実かもしれませんが・・ で、オレゴンの「地方債の手引き」に「債券発行ポケットチェックリスト」という実務者向けの手順書がありましたので、それに従って日米比較をしてみたいと思います。(正確にはオレゴン州/日本の比較です。)<チェックリスト>

 


1.債券弁護士(Bond counsel)の選任。

ボンド・カウンセルは債券発行の法的側面に責任を持ち、起債が適法に行われるかどうか総覧します。債券市場が信認する大手法律事務所しか実質上、なれない。

2.金融アドバイザー(Financial Advisor)の選任。

経済的側面のアドバイス。例えば、公募でなく「交渉」で市債を引き受けてもらうような場合、債券市場の状況、金利動向等についての助言が必須。3.起債高の決定。少なくとも下記の項目を含む。

a 事業費(用地費、工事費・・・)
b 起債に要する費用(債券弁護士・金融アドバイザーの報酬、金融機関手数料、元利償還額、「債券保険」コスト、印刷広告費など)
c 年々の元利償還額と収入の見積もり。税の未収額を含めること。 
d もし適用できるなら、引き受け手数料のディスカウントを考慮すること。

 

4.元利償還金が手元現金で支払えるかどうか、不可能なときの代替措置について決めておくこと。

5.金額・発行時期等をキャッシュ・フローに合わせて組み立て、発行コストその他を最小とすること。(市町村負債助言委員会は「オレゴン起債カレンダー」という各団体の起債の発行時期と発行額をまとめた資料を発行して発行時期の調整を勧めています。州やポートランド市などの大口の起債の直後だったりすると、市場から資金が払底して起債が困難になることもあるからです。)

 

6.発行に際して市民が果たす役割を決めること。
a 「市民助言委員会」を作るかどうか。(投票で承認をもらわなければいけないような場合、「承認」に向けてキャンペーンを張る必要があり、その場合、市民各層を代表する委員会をつくることはとても有益なのだそうです。)
b 資産税や使用料に影響があるかどうか。 
c 発行に際して住民投票が必要か。

(オレゴン州の場合、課税無制限一般債 Unlimited-Tax Genaral Obligation Bondの発行には住民投票による承認が必要です。州憲法が定める税の限度内を担保として発行される課税制限つき一般債 Limited-Tax Genaral Obligation Bond は住民投票は不要です。ただし、市場からは「ハイリスク」と判断され、より高い金利を課されてしまうという、厳しい世界であります。また歳入債 Revenue Bond と言って事業の収益で償還する起債も投票は不要です。公営企業債に性格が似ています。)

 

7.起債発行を承認する市議会の決議を得ること。もし投票が必要ならば選挙と投票名称についても決議を得る。

a 採択の前に債券弁護士及び金融アドバイザーに決議及び投票名称について確認させる。 
b 州憲法に定める税の制限に抵触しないかどうか確認する。

 

8.起債関係の予算措置 

a 資本投資会計を設けて起債収入をプロジェクトに支出するとともに、事業からの収入を徴収する。
b 公債費会計を設けて元利償還金の支払いを行う。翌会計年度の最初の支払いは、税の徴収の前であることもあるので、支払いができる繰越金が発生するようにすること。


<補足>「格付け会社」:日本でも知られるようになったムーディーズやスタンダード&プアーズなどの格付け会社による格付けが、債券発行にあたって市場から求められます。格付けの費用は、債券発行者(自治体)が払います。自治体は、金融アドバイザーなどの助けを借りて格付け会社にプレゼンテーションを行います。

「信用補強機関または債券保険」:格付けが低いと利率が高くなるばかりか発行そのものが困難となるので、手数料を払って「信用」を強化することがあります。銀行から信用状を発行してもらったり、債券保険に加入するなどです。<結び> 全体に、アメリカの地方債はとても市場主導です。そのため金融上の専門知識が必要となるので、金融のプロがたくさん発行に関わります。そのためのコストは安くないようです。

 一方、我が国の場合は巨大な地方債資金の半分以上が財投資金であり、地方債の発行は「国からお金を借りること」ということとほぼ同じです。このため、起債の手続きもシンプルかつ経済的ですが、国−地方の関係の中で閉じてしまっていて、外から見えにくいという欠点があります。

 今後、2005年には自治省による「地方債の許可制度」が廃止されることですし、地方債(借金)に対する市民の視線がますます厳しくなっていくのは間違いなく、地方債の制度も変わらざるをえないと思いますが、現状ではアメリカ型の市場中心の制度とは非常に懸隔があると感じています。


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