18:濡れ落ち葉のまちから
すっかりポートランドも寒くなりました。オレゴニアン(オレゴン州民)たちも風邪をひく季節です。
私も、ご多分にもれず風邪を引きこみ、一時は声もでないような有様でした。(もうすっかり良くなりましたけど。)ポートランドの風景も秋の色から冬の色に移りつつあります。
オレゴンは森のくにです。そのへんの電柱にも、何気なく二十メートル、三十メートルもある、立派な一木(いちぼく)が使ってあったりします。
ですから、ポートランド市内たげでも何千という木があります。赤く黄色く紅葉して誠にきれいでしたが、風が吹けば枯葉が落ち、雨が降ればまた葉が落ちます。街路が枯葉で覆い尽くされ、雨に濡れてたちまち土と化していきます。腐葉土の良い匂いがしす。森の匂いです。でもとても滑りやすいので、足元には少し注意しないといけません。
幾千本木々より 幾百万の枯葉 舞い散り冷雨 かそけく 降り すみやかに 土に還るうつむいて 人は歩み 摩天楼 驟雨にかすむ ここは地中海性気候。冬の雨期に入ったポートランドは、いささか水墨画の趣です。ちょっと鬱陶しいのは確かですが、メランコリーもそれなりに詩的ではあります。靴の底にいつの間にか濡れ落ち葉が張りつき、家の中でもどこでも枯葉が上がってくる、そういう季節です。オレゴニアンたちはあきらめ良く、室内運動場(ジム)にこもって汗を流すのです。
今日は、久々の晴れ間がのぞき、私も具合が良くなったのでコロンビア川沿いにドライブに出かけました。出かけたときは晴れていたのですが、雨雲に追いつくたびに時折雨がパラつきます。そしてゆったりと流れるコロンビア川の上に、雄大な虹! 娘は大喜びです。調子に乗ってマウントフッド・ハイウエイに入りました。
標高三千メートルの偉峰・マウントフッドの裾野を走る、オレゴン版「やまなみハイウエイ」です。リンゴ畑と牧場の一帯でもぎたてのリンゴを買い求め、さらにずんずんと山の中に入っていくと雨が降り出し、深山幽谷・まさに水墨画の趣。やがて雨の粒が妙に大きくなってきたな、と思うと「お父さん!雪だよ!」と娘。おやまあなんと雪です。雪がどんどん降ってきます。それでも路面には積もっていないから大丈夫、とさらに進むと、ついに一面の雪景色です。路上も真っ白・・。娘は大喜びですが、雪備えなど全くしていない今日の私たち。「ここで車がエンコしたら、死ぬね。」「うん、凍死だね。」と夫婦で顔を見合わせ、とっとと尻尾を巻いて出直すことにしました。「えー、なんでー。」とぶうたれる娘。それで、帰途、フッド川の渓流のそばで止まって娘と雪合戦をしました。
下界に降りると黄金色の秋景色。そして帰りのコロンビア川沿いでは、車軸を流すような大雨・・・。オレゴンの自然は、本当に雄大でかつ陰翳に富んでいます。
大学の並木の下でリスをよく見かけます。すっかり冬毛になった彼らも、この季節、冬ごもりのしたくに忙しいようです。冬眠する動物の多くは、新しい家族とともに春を迎えます。 実は、私たちの家族も、来年の夏に一人増えることが判明しました。最初、予想外の展開にのけぞってしまった私たち夫婦でしたが、なんとかこちらで産めるように頑張ってみるつもりです。予定日は来年の六月。何回かこちらの産院に行って、日本語ができる女医さんが担当と決まり、だいぶ心強く思っています。