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30:オレゴン選挙事情


 日本でも総選挙も終わりましたが、当地オレゴンでも5月16日に大統領予備選挙が行われました。うっかりすると気づかないで終わりそうな、静かーな選挙でした。

 4月にVoters'pamphlet という分厚い冊子が郵便受けに入れられていました。これが選挙公報で、150ページもあります。大統領のほかに連邦上下院議員、州の上下院議員、州の官房長・財務長官・司法長官のポストについて、共和党・民主党の候補者を決める予備選挙が行われたことに加え、「過半数を超える得票者がいない場合、上位二人が秋の決選投票に臨む」という意味での予備選挙(過半数を取れば確定)が、州最高裁判事、高裁判事、巡回裁判所判事、カウンティのコミッショナー、広域自治体「メトロ」議員、ポートランド市長及びコミッショナーについて行われました。それに加えて数多くの住民投票!さすが民主主義の本場、選挙で選ぶ公職がやたらに多いです。選挙公報が分厚くなるはずです。

 でも、そのわりには、選挙期間中もずいぶんと静かでした。最大の焦点である大統領予備選はとっくに大勢が固まっていたのでオレゴンの有権者の関心が低かったというともあるのですが、なんと言っても、こちらの選挙では選挙カーの連呼がなく、街頭ポスターもないということが「静かさ」の一番の原因です。

 加えて、今回は米国でも初の「全面的郵便投票」で実施されたので、一層「選挙があっているのかどうかよくわからん」状況が増大しました。有権者は投票所に行く必要はなく(もちろん行ってもいい)、郵送されてきた投票用紙に記入して返送するだけでいいのです。5月16日午後8時必着。これは、有権者の負担を減らして、投票率の低下を何とか食い止めようとする試みです。確かに今回、投票率は約47%と、史上最低だった前回予備選(98年)の35%を大きく上回りました。

 しかしポートランド学校区の教育水準を回復させるための増税の住民投票は、投票の過半数以上の賛成があったにもかかわらず、「有権者の過半数の投票があること」という投票率要件を満たせなかったため否決されてしまいました。ボランティアが一生懸命電話をかけ、TVコマーシャルも流し、投票用紙を集めに行く(!)なんてことまでしていたのですが、投票しない無関心層にアピールできませんでした。(郵便での投票を認める以上、人に投票用紙を預けることは違法ではありません。でも選管は「好ましくない」と渋面でした。)

 そう言えば、ポートランド市長は現職のベラ・カッツ市長が三選を果たしましたが、次点はなんと19歳・大学二年生の青年! ハンサムでナイスなジェイク君が3万3千票も取って、カッツ市長の6万8千票のほぼ半分にまで迫りました。政策もなかなかナイスでまともなのですが・・・。ポートランドの有権者も、結構退屈していたようです。

 16日の夜、ポートランド市民は選挙結果よりもNBAトレイルブレイザーズのプレーオフに熱中していたようです。淡々とした選挙も、良し悪しかもしれません。

 と、上記のように書いたのが選挙の直後だったのですが、一週間後にビックリ! ポートランド学校区の増税の住民投票が、「可決されて」いました。投票の一週間後、選管が「投票率は50%を超えていた」と発表、その過半数が課税に賛成だったので、増税案は可決されました。

 なんか、「あれれ?!」という感じなのですが、ムルトノマ郡選管によれば、「これは単純な算術の問題」ということです。投票数が増え、登録有権者数が減ったために投票率がアップ、50%を超えたものです。まず学校区の増税案の部分がブランクであった票9,200が加えられ、ムルトノマ郡以外で投票された票 1,300、汚損により手作業でカウントされた票 1,500が加わって投票の方は12,000の増。対して、有権者数の方は「配達不能」で返送されてきた投票用紙の有権者を精査して 6,452人が登録有権者リストから削除されました。

 こうして、「ポートランドの学校区の教育水準を回復するための増税案」は可決されたのですが・・・。なんとなく気の抜けた感じなのは否めません。カッツ・ポートランド市長をはじめとする増税推進派の人たちは「秋にある次の総選挙でまた頑張ろう!」と気合いを入れていたのですから。カナダ・ポートランド学校区教育長の「これはポートランドの子どもたちの勝利である」というコメントも、選挙当日に聞けていたら、もっと感慨深かったでしょうに。

 こういうことは、日本では考えられません。選挙日の三ヶ月前の基準日の住民基本台帳をベースに、投票日までに「選挙人名簿」の精査を終わらせてしまいますので、投票当日にはほぼ完璧な有権者リストが出来上がっています。従って、「有権者数」が大きく異動するということはありえないのです。

 日本人には不思議に思われることですが、米国では「選挙のための登録」が別途必要です。「Voter Registration Form」(郵便局や大学に置いてあります)に住所・氏名・生年月日等を書いて送るだけです。傑作なことには「支持政党」を書く欄があり、日本的感覚ですと「何?これ。」という感じですが、予備選挙では「党員だけしか投票できない」場合があるためです。「私は米国国民です」「私はオレゴン州に居住しています」「選挙当日に18歳以上です」「この登録において真実を述べています」と誓約・サインするだけです。こんなんで不正が防止できるのかいな、とちょっと心配になるほど。一応「不正登録は10万ドル以下の罰金または5年以下の懲役」と警告はしてありますが。多少の不正があったとしても、手続きを軽易にして登録を促進した方が良い、という「哲学」を感じます。

 ちなみに、今回の総選挙で初めて実施された我が国の「在外投票制度」は、とても使いにくくて、非効率です。最初だからということを割り引いても、ひどい。見直しが是非必要です。


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