(2001年2月版) ◎は特にお勧めの本です
自治体、公的機関、NPOの経営改革を考えるためには、既成の行政学の範疇を超えた幅広い知見が不可欠です。また、経営改革の本質は、学術書よりもむしろ経営者の手記や小説に、うまく語られるようです。解説も参考に、取捨選択してお読みください。
(1)経営とは何か
これからの自治体、公的機関、NPOの改革にとって、「経営」の考え方は不可欠です。しかし、「経営」という言葉に、なじみのない方もおられるでしょう。難しい経営理論や経営学にいくまえにまず「良い経営」とは何かを、感じとっていただきましょう。
●「良い経営」について考えるための本
◎土光敏夫『経営の行動指針』(産能大学出版部)多くの経営者が、座右に置く名著。実業界では、いまだにスーパーロングセラーの本。土光さんが自らの経営哲学、組織論をわかりやすく語りかけます。◎ピーター.F.ドラッカー『非営利組織の経営 原理と実践』(ダイヤモンド社)
ドラッカーは、アメリカの経営学者ですが、コンサルタントや実務の経験が豊富で、日本の経営者の間では絶大な人気があります。日本の組織文化についても詳しく、さらに企業経営だけではなく、政府の経営やNPOについても鋭い知見を提供してくれます。まずは、この本を読み、さらに他の代表作も読んでみてください。ジェームズ.C.コリンズ、ジェリー.I.ポラス『ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則』(日経BP社、1995)
トム.ピータース『エクセレント・カンパニー』(講談社)
竹内弘高『ベスト・プラクティス革命 成功企業に学べ』(ダイヤモンド社)
トム.コネラン『ディズニー7つの法則』(日経BP社)
以上四冊は、米国の実証主義の経営学の技法を駆使した、「良い会社論」の代表作。ピーター・M・センゲ『最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か』(徳間書店、1995)
「学習する組織(ラーニングオーガニゼーション)」を提唱するピーター・M・センゲのベストセラー「The Fifth Discipline」の翻訳です。
●日本型経営とコーポレートガバナンスについて考える本
日本の行政組織が抱える問題は、実は多くの場合、民間企業をはじめ日本の多くの組織が抱えている問題と共通しています。以下の二冊は、日本的経営について考える上で役立ちます。田尾雅夫『会社人間はどこへ行く』(中公新書、1998)
荒井一博『終身雇用制と日本文化』(中公新書、1997)
現在、日本企業のコーポレートガバナンスが厳しく問われています。この議論の多くが行政組織にも当てはまります。以下の二冊は、トップのリーダーシップ、ディスクロージャー、アカウンタビリティ、そして改めて行政は誰のためにあるのかということを考えるヒントになります。大橋敬三『社外取締役 企業経営から企業統治へ』(2000 中公新書)
伊丹敬之『日本型コーポレートガバナンス』(2000日本経済新聞社)
また、「自律型組織への移行」を考える上で、参考になる本を二冊ご紹介します。◎高橋俊介『成果主義』(1999東洋経済新報社)
太田肇『個人尊重の組織論』(1996中公新書)
●経営の歴史とイノベーションの意義を学ぶための本
経営の歴史、特に、経営革新をリードしてきた経営者の逸話を読むと、いつの時代も突出した個人がもたらす「イノベーション」が歴史を変えてきた、ということを実感させられます。米倉誠一郎『経営革命の構造』(1999岩波新書)
J.シェレドレイク『経営管理論の時代』(2000文真堂)
S.クレイナー『マネジメントの世紀』(2000東洋経済新報社)
なお、とりあえず経営学に触れてみたいという方には、以下の二冊が便利です。ジョセフ.ボイエット&ジミー.ボイエット『経営革命大全』(1999日本経済新聞社)
別冊宝島『経営学入門』(1998宝島社)
●公的機関の経営
野中郁次郎『アメリカ海兵隊-非営利型組織の自己革新-』(中公新書)公的な機関であっても、今後はその存続すら安泰ではありません。行政機関にお勤めの読者の皆さんにとって、アメリカ海兵隊が自らの生存領域を見いだして革新を遂げてきた歴史は、大いに参考になるはずです。以下の2冊では、病院のような公共サービス機関においても、TQMやベンチマーキングといった、民間企業の経営ノウハウがいかに役立つかがお分かりいただけると思います。
麻生飯塚病院 『ベストプラクティス 飯塚病院の挑戦 質の向上とコスト削減に向けて』(日経メディカル開発)
立石春雄『病院におけるTQM活動 -病院のQC運動のTOTAL化を目指し-』(麻生飯塚病院)
(2)改革とは何か?
本書では繰り返し「これまでの行政改革は、改革の名に値しない」と述べてきました。それでは、本物の改革とはどういうものなのでしょうか? 理論より事例、また、理論書より小説。まずは、イメージトレーニングから始めましょう
●絶対お勧めの小説2つ
◎童門冬二『小説上杉鷹山(上) (下)』(学陽書房)2冊とも読みやすい。前者の著者は、東京都の元職員。行政改革への筆者の熱い思いを歴史小説に託した好著です。後者は映画「スーパーの女」(伊丹十三監督)の原作。著者は、スーパーマーケットの社長で、元商社マン。顧客満足やリエンジニアリングなど経営学の基礎概念が無理なく学べます
●改革の最前線レポート
石山順也『アサヒビールの奇跡 -ここまで企業は変われる-』(講談社)『起死回生-日産改革ドキュメント』(2000日経新聞社)
『ゴーンが挑む7つの病』(2000日経BP社)
ロバート.スレーター『ウェルチ GEを最強企業に変えた伝説のCEO』(日経BP社)
高塚猛『会社再建3つの戦略』(2000 かんき出版)
「もうだめ、どうしようもない」という状況から会社を立て直した例があちこちにあります。国鉄改革を率いた土光さんも、実は戦後まもなく、危機的な状態にあった東芝を立て直した名経営者でした。上の五冊を読んでいただくと「あきらめない。くじけない」という先人たちのガッツが伝わってきます。
●大企業病について
そうはいっても、会社はなかなか変わりません。「わかっているが、変われない」という病理と処方箋を解説した本を二冊紹介しておきましょう。◎柴田昌治『なぜ会社は変われないのか』(日本経済新聞社)
スティーブン.R.コフィー『7つの習慣』(キングベアー出版)
●変化への心構え
私たちは、知らず知らずに変化を恐れていないでしょうか。現状の変化に躊躇している人に是非おすすめです。アメリカの企業の社員研修にも多く使われているベストセラーです。スペンサー・ジョンソン『チーズはどこへ消えた』(扶桑社)
(3)文明・社会論
考えてみれば、九〇年代の日本では、改革が叫ばれ続けていました。その割に、大して変わらなかったのは何故なのか。そして一体、私たちの社会はどこへ向かうのでしょうか。
●二一世紀の日本
日本社会の将来がどうなるか。自分たちの社会をどうしたいのか。そんなことを考えるのに、うってつけの本を2冊ご紹介します。◎次世紀の暮らしを語る懇談会・川勝平太・嶌信彦編『居心地のよい国ニッポン ジャパニーズ・ドリーム』(中央公論新社)
山岸俊男『安心社会から信頼社会へ』(1999中公新書)
●成熟国家に学ぶ
民主主義、自治、信頼、コミュニティといった、社会を支える基本的な要素を考える際に、何といっても、アメリカ社会がこれまでに経てきた紆余曲折は、示唆に富むものです。今後の日本社会の在り様を考える上でも、ぜひ参考にしたい図書です。JMブキャナン『行きづまる民主主義』(1998剄草書房)
アマルティア・セン『不平等の再検討』(岩波書店)
◎ジェーン・ジェイコブス『都市の経済学 -発展と衰退のダイナミクス』(TBSブリタニカ)
◎立花隆『アメリカジャーナリズム報告』(文芸春秋)
(4)自治体経営
自治体を取り巻く経営環境は今後、厳しさを増すばかりです。しかし、この時代を生き抜こうとする取り組みはあちこちで始まっています。以下の本を読んでいただければ、その躍動感をきっと感じ取っていただけると思います。
●加速する自治体改革
北川正恭知事のもとで改革に取り組んできた三重県庁のドラマを垣間見ることのできる、以下の二冊は、自治体職員必読です。自治体が自らの意志で「変わることができる」ということが、これほど如実に分かる例はありません。岩見隆夫『朝令暮改でいいじゃないか -北川正恭の革命-』(PHP研究所)
ばばこういち『改革断行』(1999 KKゼスト)
また、自治体の改革は、既に分散多発的に起こり始めています。やはり改革は、既に実践されている例を学ぶのが近道です。清水聖義『「前例」への挑戦 -自治体はサービス創造企業-』(学陽書房)
末吉興一『実践都市経営 -行政力を高める十カ条-』(PHP研究所)
土屋正忠『武蔵野から都市の未来を考える』(東洋経済新報社)
伊藤滋・戸沼幸市・榛村純一編『分権と変革の都市経営 -都市計画家たちの都市論と掛川論-』(清文社)
細川珠生『自治体の挑戦』(学陽書房)
土屋義彦「小が大を呑む 埼玉独立論」(1997講談社)
●地方自治のゆくえ
地方財政はいずれ破たんすると、みんな思っているにも関わらず、何となくずるずると問題は先送りされています。次の一冊は、この問題の根本に鋭く切り込み、自治体の役割を問い直します。◎神野直彦『地方自治体 壊滅』(NTT出版)
地域ニーズに応える地方政府とは一体、どういうものなのか。イメージを膨らますには、以下の4冊がお奨めです。
林泰義編著『市民社会とまちづくり』(ぎょうせい)
木佐茂男『豊かさを生む地方自治 -ドイツを歩いて考える』(日本評論社)
都村長生『なんしょんな!香川』(ホットカプセル)
志村重太郎編著『住民協働型地域づくりシステム 地域の価値発見と想像をめざして』(2000 ぎょうせい)
●地方自治の課題と現況
次の二著を合わせてみると、自治体の課題と現況を網羅的に把握するのに手っ取り早い。一冊目は首長、行政実務者、議員、研究者など84氏を動員した課題論調。二冊目は全国の首長アンケートによる実態分析をまとめたもの。恒松制治監修『地方自治の論点101』(1998 時事通信社)
共同通信社内政部編『全国自治体トップアンケート'98』(1998 共同通信社)
(5)行政経営全般
ニュー・パブリック・マネジメントの考え方は、行政の仕事に携わる方々にとっては、もはや、避けて通れない基礎知識です。また、民間企業にお勤めの読者の方にも、海外の行政機関の改革がどこまで進んでいるか、ぜひ知っていただきたいと思います。それが日本の自治体・政府機関に対する「健全な外圧」となり、改革を進める原動力になるからです。
●ニュー・パブリック・マネジメントとは
ニュー・パブリック・マネジメントとは何か。また、海外では、どのような考え方で、具体的に何が行われているのか。まず、全体を俯瞰するために、お奨めの四冊を紹介します。◎デビッド.オズボーン、テッド.ゲーブラー『行政革命』(日本能率協会マネジメントセンター)
◎大住莊四郎『ニュー・パブリック・マネジメント -理念・ビジョン・戦略』(日本評論社)
◎白川一郎・富士通総研経済研究所編著『行政改革をどう進めるか』(NHKブックス)
C.フッド『行政活動の理論』(2000岩波書店)
●従来型行革の総括
こうした海外のニュー・パブリック・マネジメントの事例と理論に照らせば、国内の行革がなぜうまくいかないのかが、はっきりと見えてきます。従来型行革のどこに限界があるのか、以下の四冊は、この問題を考えるヒントになります。◎大嶽秀夫『「行革」の発想』(TBSブリタニカ)
田中一昭・岡田彰編著『中央省庁改革 -橋本行革が目指した「この国のかたち」』(日本評論社)
江田憲司『誰のせいで改革を失うのか』(新潮社)
水野清編著『「官僚」と「権力」省庁再編はなぜねじまげられたか』(小学館文庫)
竹中平蔵『経世済民 -経済戦略会議の一八〇日-』(ダイヤモンド社)
●行政評価と行政経営の技法
とりあえずは、次の六冊が必読です。◎山本清『自治体経営と政策評価』(公人の友社)
石原俊彦『地方自治体の事業評価と発生主義会計 -行政評価の新潮流』(中央経済社)
◎上山信一・玉村雅敏・伊関友伸編著『実践・行政評価 -事例、解説、そしてQ&A-』(東京法令出版)
◎上山信一『「行政評価」の時代 -経営と顧客の視点から-』(NTT出版)
◎上山信一『「行政経営」の時代 -評価から実践へ-』(NTT出版)
ピーター.F.ドラッカー編著『非営利組織の「自己評価手法」-参加型マネジメントへのワークブック-』(ダイヤモンド社)
なお、民間経営手法を応用する、と言った場合に必ず問題になるのが、行政機関の特殊事情。以下の三冊は、この問題を考える参考になります。H.サイモン、E.リドレー『行政評価の基準』(1999北樹出版)
田尾雅夫『行政サービスの組織と管理』(1990木鐸社)
リップスキー『行政サービスのディレンマ -ストリートレベルの公務員-』(1986木鐸社)
なお、日本の行政に実際にこうした考え方を取り入れようという研究も始まっています。そういう成果の先駆けとして、次の二冊は参考になるでしょう。唐津一編著『新たな行政の管理基準 -民間企業の経営管理の視点から-』(2000 財団法人行政管理研究センター)
『行政の効率化に役立つ民間経営手法 -スピード・コスト・品質・サービスの向上-』(1996 財団法人行政管理研究センター)